『20 ずっと』




「ずっと一緒にいたい」とお前は言う。

その真っ直ぐな瞳で、何の迷いも無く。
お前にとっての『ずっと』は私の『束の間』だ――――――それを判っているのか?

私とお前。妖と人。
その余りに違う生を判っていながら、尚その言葉を紡いでいるのなら、愚昧と言う他無い。
過ぎてしまえば、現(うつつ)であったかさえも曖昧になるであろう、泡沫の時。
その中で望む永遠など、霞よりも淡く淡い、夢と呼ぶにもおこがましい程の幻に過ぎぬ。
変わらぬものなど唯一つとして無い。
『今』この時を繋ぎ止めておくことなど何人も叶わぬものを・・・。
それでも人間は夢を見る生き物なのか?
         
        「時が止まれば良い」と――――――


愚かだ。
りん、お前もそうなのか?永遠の『今』を望むのか・・・?




「置いて行かないでね」とお前は言う。

一抹の不安の色を瞳に滲ませて、いつになく真剣に。
置いていくのは『私』ではない、『お前』だ――――――それを判っていないのか?

つくづく、莫迦な事を言うものだ。
どんなに強く願ったところで、宿命(さだめ)は変えられぬ。
私が置いて行かずとも、容赦なくお前は私を置いて逝くのだ、この私を囚えたまま。
いつか来る『その時』に怯え、考える事を拒んでいるのは私やも知れぬ。
いつ朧になってしまうのか判らぬお前を、確かなものにするにはどうすれば良い・・・。
それでもお前は願うのか?


        「ひとりにしないで」と――――――


愚かだ。
りん、お前は自分自身が私を『ひとり』にさせるのだと何故気付かない・・・?



                *      *     *



     「―お前の望みは何だ?」
     「殺生丸さまと、ずっと一緒にいたいよ。
      りんの心に殺生丸さまがいるのと同じくらい、殺生丸さまの心にりんがいられたら、
      りんが死んじゃっても、きっとずっと一緒にいられると思うから。
      ・・・だから、りんのこと置いて行かないでね?」



                *      *     *



―――愚かなのは私か。
     お前は決して判っていないわけではなかったのだ。
     お前の望む永遠は、『今』という名の虚像を閉じ込めることなどではなかった。


        ―心に在ること―


心というものさえ、目には見えぬ不確かな存在。
更にそこにある想いなど、どれだけ儚いものなのか。
だがそんな戯れ言に、あえて溺れるのも、また一興やも知れぬ。
心に想うことがお前と共にあることならば、その願いはとうに叶えられている。
お前以外に、この私を囚え得るものなど未来永劫ありはしない、置いていくことなど有り得ない。
この私の全てを懸けて、誓う。
だからお前も誓うがいい。


          『ずっと』一緒だと――――――




【終】



[H19.11.7]



ブラウザを閉じてお戻り下さい。。。